前回に引き続き2冊目の書評記事です。
毎回記事の冒頭に過去記事に一つずつ増やしていくのが楽しみです。
パピーゴ
「子供の教育本か、興味ないな。」
そんな風に思われた方、もうちょっと我慢して「戻る」ボタンを押さないでください。
この本を読むきっかけは、「子供の教育になんか参考になりそう」「前著の『AI vs.教科書が読めない子どもたち』が面白かった」でした。
そのようなきっかけがなくても、日本の全国民に読んでももらいたい!
心からそう思える本でした。
なぜならこの本は、社会を生きる上で必須となる「読解力」に焦点を当て、「読解力とは何か?」「なぜ必要か?」「自身の読解力を把握しているか?」を問うていて、国民一人一人が向き合うべき質問だからです。
そうは言われても、ピンと来ないという方にはぜひこの記事を読んでいただきたい。
この本の内容の更なる紹介と私なりにこの本について私の学んだこと実践したことを中心に語ります。
本を買うか買わないかの判断材料を提供するだけではなく、この記事を通じてあなたの人生に何かプラスなる学びや気づきのきっかけとしたいです。
もしあなたが次に当てはまる方であれば、特に読んでほしいです。
- 新井紀子さんの前著『AI vs 教科書が読めない子供たち』を読んだ、興味ある。
- どうして自分は「バカ」なんだと思う場面が良くあるが、どうすれば良いかわからない。
- AI技術の進歩に対して漠然とした不安を持っている
- これからの時代、子供にどのような教育の機会を与えるべきか悩んでいる。
- 日本の学校教育に対して懐疑的、不満がある。
目次(クリックすると自動で飛びます)
『AIに負けない子どもを育てる』について知っておくべきこと
まず「AIに負けない子供を育てる」について知ってもらいたい。
本書の紹介と、本書の構成や要点を簡単におさらいをします。
また、本書を読む前、読む上で参考になる情報もまとめます。
『AIに負けない子どもを育てる』の内容と著者とアピールポイント
「AIに負けない子供を育てる」について、本の内容、著者について、本のアピールポイントについて簡単に紹介します。Amazonの商品説明で記載ある内容をそのまま引用しています。
『AIに負けない子どもを育てる』の内容
AIが苦手とする読解力を人間が身につけるにはどうしたらいいのか?読解力向上のために親、学校、個人ができることを提言。小学校・中学校で実際に行われて成果をあげている授業・取組みを公開!大人が読解力を身につける方法も明らかにする。
『AIに負けない子どもを育てる』の著者:新井紀子さんについて
新井 紀子(アライ ノリコ)氏
国立情報学研究所教授、同社会共有知研究センター長
一般社団法人「教育のための科学研究所」代表理事・所長。
東京都出身。一橋大学法学部およびイリノイ大学数学科卒業、イリノイ大学5年一貫制大学院を経て、東京工業大学より博士(理学)を取得。専門は数理論理学。
2011年より人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクタを務める。2016年より読解力を診断する「リーディングスキルテスト」の研究開発を主導。
主著に『数学は言葉』(東京図書)、『コンピュータが仕事を奪う』(日本経済新聞出版社)、『ロボットは東大に入れるか』(新曜社)などがある。特に、2018年に出版した『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)では、大川出版賞、石橋湛山賞、山本七平賞、日本エッセイスト・クラブ賞、ビジネス書大賞などを受賞した。
『AIに負けない子どもを育てる』のアピールポイント
この本のアピールポイントとしては、上の出版社の広告からもわかるように2つ。
- 前著『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の続編であること。
- 「体験版リーデイングスキルテスト」を収録していること。
右側の広告では、かなり煽られています。「ちょっとやばいかも」と思った方は、思わず買おうかなと思ってしまうかもしれません。
『AIに負けない子どもを育てる』の構成と要点
『AIに負けない子どもを育てる』を理解のため参考になる動画
本の下調べで頼りになるのがYoutube。
と思いきや、この本についてあまり解説されている動画がありませんでした。
いくつか見た中で一番良いと思ったものを紹介します。
なお、前著の『AI vs 教科書が読めない子どもたち』については中田敦彦さんの動画で解説してます。本題から逸れますが、そちらの動画もご参照ください。
シンの社会科教室の動画(20分)
いくつか動画を見てみましたが、この動画が一番おすすめです。
この動画を見るとこの本をアピールポイントがもれなく把握できると思います。
教育のための科学研究所(著者ご本人出演)の動画(16分)
RST試験にご興味を持たれた方は、まず見ていただく動画はこちら一択です。
著者が理事長を務める「教育のための科学研究所」ホームページに掲載されているご本人出演のRST解説動画です。RSTの概要がしっかり解説されています。
Flier(本の要約サイト)での要約文
こちらは有料サービスなので契約している一部の方のみですが、本の要約サイトFlierでも本書の要約があります。
要約文を読んだ限りでも、読む時間10分程度の分量にしては、本の内容を的確に要約できていると思います。
もし契約されている方は以下のリンクよりご確認ください。
参考 AIに負けない子どもを育てるflier契約されていなくて、「そもそもFlierって何?」という方は過去記事を合わせて読んでくださいますと嬉しいです。
記事の中で紹介されているリンクからゴールドプランをお申し込みいただくと月額のお支払いが1割引きになります。
『AIに負けない子どもを育てる』を読んで学んだこと
次に私がこの本を読んで学んだことについてお伝えします。
ここで取り上げたいのは、3つです。
学び①:普段から文章を正確に読み解いて、理解していますか?
誰もが、誰かをねたんでいる。
文章2:
誰もが誰かからねたまれている。
この二つの文章は同義か?
答えは「同義ではない」になりますが、自信を持って答えられましたでしょうか。
パピーゴ
理解できるかできないかの境界線もそうですが、衝撃を受けたことがあります。
「これ、理解できますか?」と問われたことにより集中して読み解いて、二つの文章が異なり、その理由を考えました。
普段の活字を読む時に、どれくらい注意を払って文章を読んでいるのでしょうか?
普段なら二つの文章の違いに注意も傾けませんし、「誰か」「ねたむ」のキーワードで前後の文脈から最もらしいもので解釈しているんだと思います。
この問いを答えるのに、文章も2・3回読み直してますし、何か普段使っていない頭の機能を使ったような感覚に陥りました。若干疲れました。
冒頭の「あなたは教科書を読めますか?」に対して、私の場合、「本気を出せばなんとか読める」が実態だと自覚しました。
そして「普段ちゃんと読めてますか?」に対して「普段ちゃんと読めてないかもしれません」という答えになります。
これが、この本を読んで受けた一番の衝撃と気づきでした。
学び②:リーディングスキル試験(RST)を知る
この本の大半の内容はリーディングスキル試験(RST)の宣伝といっても過言ではありません。
リーディングスキル試験(RST)について、ひと言でいうと日本語の短文を正確に読解する能力を測る試験です。
この試験の画期的な点は次の点にあると考えます。
- 短文の読解力を正確に把握に特化している
- 安価で敷居低く実施できる、改善改良が容易
- 読解力に関する仮説の検証が可能がプラットフォーム
RSTの特徴①:短文の読解力に特化
RSTの一つ目の特徴として、短文の読解力に特化した内容になっています。
具体的には「読む力」を11のプロセスに区切ることで、読解の妨げる要因を正確に把握に力点を置いています。
- 文節を正しく区切る。(例:私は学校に行く→私は/学校に/行く)
- 係り受けの構造を正しく認識する。(例:大きな瞳の少女→大きいのは「瞳」である)
- 述語項構造や接続詞を正しく解析する。(「誰が」「何を」「どうした」のような構造を正しく認識する)
- 照応関係を正しく認識する。(例:私はハンカチを落とした。それを彼は拾った。→「それ」は「ハンカチ」である)
- 語レベルのマッピング(日常生活での経験や伝聞から得られる常識と、小学校における学び等から得た知識と、簡単な論理推理によって、道の用語の意味を実世界に関する知識の中に位置づける)
- 文構造レベルのマッピング(日常生活での経験や伝聞から得られる常識と、小学校における学び等から得た知識と、簡単な論理推理によって、道の用語の意味を実世界に関する知識の中に位置づける)
- 既存の知識と新たに得られた知識に対して、論理推定を働かすことにより、実世界に関するさらなる知識を獲得する。
- 得られた多くの情報間の重要度を適切に付与する。特に与えられた観点においてまた問題解決の上で必要な情報を取捨選択する。
- 同様のことを、図やグラフ等、他の論理的表象手段についても実行できる。
- 文と文以外の表現(図・グラフ・表・式等)が示している同一性を認識することができる。
- 以上の各処理において誤りがないかメタな視点からモニタリングして修正する。
出典:https://www.s4e.jp/process
一見、難しいことを書いているように見えますが、短い文章を読む能力を細分化すると、上記のようなプロセスになることが合点いくかと思います。
「語彙力がない」「指示語が理解できていない」「小学生レベルの常識がない」「二つの事柄の相関関係が理解できない」「図式化する能力がない」
これらのうち、どのプロセスがうまくできていないのか明らかになるとされています。
RSTの特徴②:導入の敷居が低い
完全にコンピューターを使った出題、回答、採点ですので極めて効率的で安価でスピーディーです。
試験自体は1時間以内で済み、回答に要する時間は35分程度。
視力検査のように正解なら難しい問題、不正解ならより簡単な問題を出題する方式のため、短時間で正確かつ効率的に読解力を把握できます。
小学6年生から社会人まで個人受験も可能で、年数回ですが、代々木ゼミナールで受験ができるようです。
受験料は4,400円(税込)とのことです。
パピーゴ
RSTの特徴③:読解力に関する仮説の検証ができるプラットフォーム
本著によりますと、現在小学4年生から社会人までで1ヶ月に約1万人が受験しており、問題は数千あり、年々膨大な受験データを蓄積されています。
例えば本の中で紹介あった事例として、「『である調』から『です・ます調』になると正解の確率があがるのでは」との仮説立て、試験問題に反映すれば、数ヶ月後には統計データとして仮説が検証できるというものでした。ちなみに、この仮説は正しかったようです。
これまで学校教育は、教師の長年の勘や経験が物言う分野でした。
RSTが提供するプラットフォームが、学校教育を「科学」し、仮説・検証による改善のループを導くツールとして可能性を秘めている。その点でとても画期的と感じました。
学び③:アクティブラーニングへの誤解、デジタルへの過信、教育を科学する重要性を知る
授業時間に「黒板を書き写す」ことについてどう思いますか?
書き写すことに授業時間を割くのであれば、黒板の内容はプリント配布などにしてしまい、その分、双方向に「アクティブ」な授業を行うべきと考えていました。
けれでも、本著では「黒板を書き写す」ことを無くしたことが読解力の低下を招いたと紹介しています。
「黒板を書き写す」にしても生徒によって、それぞれスピードが全然違うようです。
読解力によって、文章を読み取って文章のブロックごとに書き写すのか文字ごとに書き写すか、差が出るとのことです。黒板を書き写しが遅い生徒に対して、教師がサポートするといったことができました。
「黒板の書き写し」を授業から無くしてしまったことによって、読解力が一定レベルに達していない子供に対して有効な打ち手が取れなくなったという話が紹介されています。
あまりこんな言い方をすると嫌われてしまいますが、小中高をアメリカで卒業した帰国子女ということもあり、あまり日本の学校教育の実態を知りません。
これは私の勝手な思い込みかもしれませんが、日本の学校教育の特徴として、
- 詰め込み型
- 均質的・脱個性
- 超アナログ
のような印象を持っていました。
漠然と「アクティブラーニングを積極的に取り入れるべき」「デジタル化を進めるべき」のような考えを持っていましたが、この本を読んで改めて印象論で「物事を語るのは宜しくない」と痛感しました。
パピーゴ
『AIに負けない子どもを育てる』を読んで実践したこと
この本を読んだことによって沢山の学びや新しい知識を身につけられました。
ただ、インプットだけでは意味ありません。
読んで学んだことを行動に移して初めて本を読んだ真価が問われるものだと思ってます。
この本を読むことでどのようなあなたへの人生へのプラスの影響があるか。
ここでは、この本を読んで実践したことを紹介したいと思います。
実践①:RSTサンプル試験をやってみました!結果はひとまず安心?!
この本の一番の良い点は、実際にリーディングスキル試験サンプル版が受けられることです。
全部で28問あります。
読解力を問うだけあって、斜め読みとか「AI読み」(目に止まるキーワードから意味を推察する読み方)では対応できません。
実際やってみましたが率直な感想です。
疲れた〜
普段あまり頭を使っていないんでしょう、かなり疲れました。
リーデイングスキル試験(サンプル版)採点結果
そして気になる結果は以下の通りです。
リーデイングスキル試験(サンプル版)の結果の解説
タイプ①:前高後高低型
- 係り受け解析・照応解決・同義判定:6点以上
- 推定・イメージ同定・具体例同定の2つ以上が3点以下
タイプ②:全分野そこそこ型
- 推定・イメージ同定・具体例同定のどれかで3点
- ほとんどが6点
- 10点満点なし
この本に手を取る層で次に多い層とのことです。
真面目で優秀でそれなりに論理的、組織の中でも頼られる存在とのことです。
読解力をしっかり身につけられているので自力でもっと伸ばせるタイプのようです。
解説されていたタイプの中でこのタイプが一番近いのかなと。
試験結果として、まず一安心です。
タイプ③:全低型
- 係り受け解析か照応解説どちらかで3点以下
中学生の平均と同じレベルで、基礎的な読解力が身に付いていない可能性があるとのことです。
タイプ④:前低後高型
- 係り受け解析か照応解説が6点未満
- 具体例判定だけが10点満点
はずれ値的なタイプとして紹介あったのがこちら。
一言で言うと「読めてないのに知識だけで解いている」タイプのようです。
ごく稀にいるようです。
タイプ⑤:全て10点満点型
- 全て10点満点
実践②:子供への「読み聞かせ」を見直してみる
本の中でも解説されていますが、読解力が確実に身につくための処方箋は存在しません。
科学的な裏付けがあるわけではないとの断りの上、子供と向き合う上でのいくつかのヒントが提示されています。
一つこの本で考えるきっかけになったのは、子供への「読み聞かせ」です。
うちには5歳の息子と3歳の娘がいますが、よく同じ絵本を読んでいます。
やはり言葉の発達段階に応じた本を読んであげるべきなのではないか。
絵本の内容からの会話も十分にできているのか。
読み聞かせを通じて絵本を好きになってもらえるか。
改めて問題意識を持ち考えることになりました。
子供の言葉の発達に応じた「読み聞かせ」本選びをする
5歳の長男向けに、「面白そう」だけれども「難しい」本の読み聞かせを始めました。
絵本ではなく子供用の文庫。
男の子が興味を持つような分野の本。
まずは、これかなと頭に浮かんだのが「エレマーの冒険」でした。
既に1回読み終えて、2周目になりますが、とても楽しんで聞いてくれます。
読み聞かせ中に本の内容の理解を確認する
エレマーの冒険だけではなく、簡単な文庫本の読み聞かせするにあたって注意してることがあります。
内容の理解を確認することです。
長い文章、難しい語彙、聞き逃し。
聞いた内容を十分に理解できていないことがしばしばあります。
エレマーの冒険で言うと、エレマーがみかん島にたどり着いたところで「ねこはどこいったのの?」と言う具合に。
読み聞かせ中に意識的に区切って、内容を理解しているか会話をしながら確認するようにしています。
読み聞かせ中に会話をする
内容の理解確認だけではなく、本の内容に夢中になってもらえるよう積極的な会話を意識しています。
主人公はどう思ったか?
自分だったらどうするか?
次何が起こると思うか?
絵本の読み聞かせの時とは違う会話ができるので親も新鮮に感じ、楽しめています。
さいごに
以上が「『AIに負けない子どもを育てる』レビュー|良書からの学び・実践したことの紹介」でした。
学びとしては、
- 文章を正確に読み解くのは難しい!
- リーデイングスキル試験(RST)はスゴイ!
- 学校教育について印象論で語るのは良くない。
本を読んで、何が変わったかと言うと、
- RST試験を本気でやってみて、自分の読解力を把握できた。
- 子供への「読み聞かせ」を見直してみるきっかけとなった。
総じて、「読解力」について考える機会になりました。
何よりも本著の中に掲載されているリーディングスキル試験(無償サンプル版)を試していただき、「読解力を把握する」と言うことをおすすめしたいです。
これだけの学びと変化をもたらしたこの本を読んで心から良かったと思っています。
この記事が少しでもあなたにとって参考になれば嬉しい限りです。
最後までご精読ありがとうございました。